ワインを買ったのが始まりで、素敵なテラコッタ風のワイン瓶を
捨てられなかったのがきっかけで、出会えたDVDでした。
この映画は、本当に、いい映画でした。
面白い、とは全く違う。むしろ、面白くはないと思う。
けれど、すべてのシーンがスクショを撮りたくなる感じ。
そしてその一枚一枚が絵画のような感じ。
きらびやかさは無く、むしろ質素な、単純な色と線。
それがとても美しい。
手元に持てて嬉しい、大事なDVDになりました。
ピロスマニの絵画展を観に行ったと思えば
これ以上なく幸せな映画だと思います。
「放浪の画家ピロスマニ」
staff
監督:ギオルギ・シェンゲラヤ
脚本:ギオルギ・シェンゲラヤ
エルロム・アフヴレディアニ
撮影:コンスタンティン・アプリャティン
ドゥダル・マルギエフ
アレクサンドレ・レフヴィアシュヴィリ
美術:アヴタンディル・ヴァラジ
ヴァシル・アラビゼ
cast
ピロスマニ:アヴタンディル・ヴァラジ
主役のピロスマニ役を担当したアヴタンディル・ヴァラジは、
なんと、映画の美術を担当している方でした。
(著名な芸術家でもあるらしい。)
これはもう運命的な「引き寄せ」を感じます。
ピロスマニは背が高く痩せ型だったようですが
ぴったりな感じです。
「静かな佇まい、素朴な人柄と声
それらが醸し出す人間的な味わい。」
プロの役者のオーラは不要なこの映画で必要だったのは
「観る人の心をさすらい
過ぎてゆく天才画家のシルエットを持つことが大事」
「ヴァラジなしには考えられなかった」
と、ブックレットに書いてありましたが
本当にその通りだと思いました。
絵本作家の〈はらだたけひで〉さんの解説が
またとても良いです。
そのDVDに付随してある解説ブックレットは
また実に丁寧に書かれていて、この映画に対する
皆の愛情を感じずにはいられません。
「ピロスマニは絵を描くために生きた。」
と書いてありましたが、私もそう思いました。
宿命ってこういうことかな?と思いました。
また、独自の黒いキャンバスは、馬の背を覆う
牛の革だと言われている。厚紙の上に描いた。
などと言われていると、ブックレットにありました。
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最初のシーンは、育ててもらった家で
その家に住む女の子に聖書を読み聞かせる
シーンから始まります。
この最初の画面が映し出されると
美しさに圧倒されてしまいました。
その画面のレイアウト、色合いもさることながら
観葉植物が、これでもかと置かれ、
女の子のベッド上にはまるで天蓋のように
サトイモ科と思われる大きな大きな葉っぱが重なっています。
ピロスマニの穏やかな声で聖書が読まれ
女の子が眠りにつきます。
(Instagram@honorinuにも画像を投稿してあります。)
ピロスマニの年譜のような、少し説明的な形で進みますが
育った家の装飾・・・
壁の色、織物や家具、観葉植物、壁に掛けられた額
夫人たちのファッション、刺しかけの刺繍を手にする様
・・・全てが美しく息をのみます。
この、ピロスマニが育った家は裕福だったようです。
他の家は、もっと質素な様子ですが、そちらもまた、
質素ながらにとっても美しい。
お土産にザクロの枝を持つピロスマニ。
友人の家の、可愛い女の子。
ピロスマニに振舞われるサモワールとサモワールを淹れる夫人の所作。
(急須のようなものに、濃いお茶が入っている。
美しい黄金色の大きなサモワールには、お湯が入っている。
受け皿の上に透明なカップが置かれ、
急須の濃いお茶を少し注いでから、サモワールの湯を入れる。)
一緒に食べていた白いお菓子?が何なのかわからなかった。
何か割ってから食べていた。ご存じの方いらしたら教えてください。
それから、食卓のシーンがいくつも出てきます。そして歌を歌うことも幾度かありました。
ネットで色々見ていたら、「タマダ」というもののようです。
人を愛し、ワインを愛するジョージアの人たちが好きになってしまいます。
美しい織物も様々なところで見られました。
また、ワインが、4つ足の付いた皮袋に入れられていました。注ぎ口が付いていました。
乾杯をしたら、一度に飲むため?
置けないワイングラス・・・グラスではなく土物ですが
ラッパのような形のコップも面白い。
土の中にテラコッタのような大きな甕を埋めて作る
美味しいジョージアワインが作られる様子も垣間見えます。
(※似ているものをweb上に見つけたので、いくつかリンクを貼らせていただいています。)
ニコ・ピロスマニは、家や家族を持たず、
酒場に飾る絵を描き、食事等の生活の世話や、画材などを用意してもらっていたようです。束縛されるのも嫌い、自分でそのような生活を選んでいた。
作品は1000〜2000点も描いたそう。
皆に「二カラ」と呼ばれ愛された、物静かな男。
ピカソなどにも称賛され、一時は祭り上げられ、そして落とされた、ピロスマニの生涯が、絵画とともに紹介されています。
絵画をもとに映画を作ったという感じもあり、
それが少しストーリーを切ってしまう感じも受けますが、
絵画展という側面で観れば、最高に楽しめます。
この映画に出会えて、私はとても楽しめました。